自己破産とは?自己破産の意味やデメリット・メリットをわかりやすく解説

東京弁護士会 第21346号。中央大学大学院博士前期課程修了。元東京地方裁判所鑑定委員。東京弁護士会公害環境特別委員会前委員長。東京簡易裁判所民事調停委員。聖学院大学、中央大学の講師歴あり。共著に、「身近な生活・環境トラブル解決の知識とQ&A (くらしの法律相談)」(法学書院)など多数。
目次
1.自己破産とは?自己破産をわかりやすく解説
自己破産とは、自分が今所有している資産をお金に換えて借金を返済し、それでも返済することができない借金は返済しなくてもいい(免責決定)と裁判所に認めてもらうこと。
つまり、今後支払いが不能であると認められる場合は、借金の全部を免除してもらうことができる手続きになります。
テレビ出演されている北村弁護士が自己破産について解説している動画がありますので、一度ご覧になってください。
2.自己破産をするには?手続き方法・やり方を解説
自己破産の大まかな流れは上記のようになります。追って説明していきます。
2−1 面談・相談
専門家に相談し、借金額、借入先の数、債権者との取引内容、家計の収支、財産の有無など専門家に聞かれた質問に回答。
恥ずかしがらずに正直に全てお話することが自己破産を行うためには大切な要素です。
2−2 受任通知の発送
専門家からのアドバイスを受け、どういった方法で借金返済をしていくのか方針を決定します。方針が決まりましたら、弁護士や司法書士と委任契約を結び、債権者に専門家から受任通知を発送します。
受任通知の到着時点で、債権者からの督促や取り立てはなくなります。
また、受任通知には、借金の残高を証明する書類を送付するように債権者に請求します。
2−3 借金総額の確定
債権者から、借金の残高や金利などの情報が集まったら、利息制限法に基づく引き直し計算を行い、借金の債務総額が確定します。
2−4 裁判所に破産手続き開始を申立
自己破産申立書と戸籍謄本や住民票などの必要書類を、管轄の裁判所に提出します。申立書は、弁護士や司法書士などが作成してくれます。
2−5 破産審尋(裁判官による面談)
裁判所が依頼者を呼出し、破産の原因や借金の状況などについて面談(破産審尋と言います。)を行います。今の財産だけでは支払不能であることが認められれば破産の手続きが開始されます。
この破産審尋は、省略されるケースもあります。
2−6−1 同時廃止手続き
財産がない場合、同時廃止といい破産手続きは終了します。多くの場合、財産がないから自己破産をしようと思いますので、個人の自己破産の場合は、同時廃止になるケースが多いです。
2−6−2 管財手続き
ある程度財産がある場合は、破産管財人を選任し、生活に最低限必要な財産を残して、住宅や車なども売却し、売却金額を債権者に分配します。
2−7 免責決定
裁判所が借金の支払い義務がないということを決定します。免責決定が出て法律的に借金免除となります。
ここまで、同時廃止の場合は、約2ヶ月程度、管財手続きが必要な場合は、6ヶ月程度時間がかかります。
3.自己破産するデメリット 8つのデメリットとは?
前記のように、借金の返済義務の免除は最大のメリットです。他方で、それ相応のデメリットもある程度は覚悟しなければなりません。自己破産するデメリットとしては、
- デメリット①:一定の財産を処分する必要がある
- デメリット②:保証人、連帯保証人に迷惑をかける
- デメリット③:信用情報(ブラックリスト)に掲載される、官報に公告される・クレジットカードが作れない
- デメリット④:破産手続中は制限を受ける資格をつかうことができなくなる
- デメリット⑤:破産手続中は自由に居住地を離れることができなくなる(許可を得れば別)
- デメリット⑥:破産手続中は郵便物が破産管財人によって調査されることがある
- デメリット⑦:破産したことが戸籍のある市区町村役場に通知される
- デメリット⑧:免責されない債務がある
ことが挙げられます。
以上のうち、特に影響の大きい①、②、③、⑨について解説します。
3−1 自己破産するデメリット1:一定の財産を処分する必要がある
自己破産の破産手続は、破産者の持っている財産をお金に換え、それを債権者に対して配当しなければなりません。したがって、一定の財産を処分しなければならない覚悟が必要です。
処分しなければならない財産とは「破産者が破産手続開始手続時に有する一切の財産」です。
ここにいう財産には、不動産(土地・建物)、動産(自動車、バイクなど)の有体物ほか、金銭の支払請求権など(給与支払請求権など)の債権や著作権などの無形物も含まれます。
もっとも、自己破産の破産手続は、破産者の生活再建を図ることも目的としています。
そこで、一定の財産は破産者の手元に残すことが可能です。これを破産者が自由に使えるという意味で「自由財産」といいます。
3−2 自己破産するデメリット2:保証人、連帯保証人に迷惑をかける
たとえば、今抱えている債務の中に保証人、連帯保証人がついている債務があるとします。
自己破産する場合は、その債務も含めて手続を進めていかなければなりません。そして、自己破産するということはその債務について返済できなくなったということを意味していますから、返済の請求は債務者ではなく、保証人や連帯保証人に行きます。
保証人、連帯保証人がついている債務だけを自己破産の対象から外すことはできません。自己破産する場合は事前に保証人、連帯保証人ともよく相談することが必要です。
3−3 自己破産するデメリット3:信用情報に掲載される・クレジットカードが作れない
自己破産を申立てると信用情報機関の信用情報に事故情報として登録されます。
信用情報に登録される期間は、免責の決定から5年程度です。したがって、5年程度はローンを組む、クレジットカードを作るなどということが難しくなります。
3−4 自己破産するデメリット9:免責されない債務がある
免責許可決定が出ても免責されない債務、つまり返済し続けていかなければならない債務があります(この債務を「非免責債務」と呼ぶことにします)。
逆にいうと、非免責債務があったとしても、免責許可決定自体は出される場合があります。この点を混合しないようにしましょう。
非免責債務の例としては、たとえば、
・暴行、あるいは交通事故(故意又は重大な過失による場合に限る)などによって相手方を死亡させた、怪我させたことで生じる損害賠償債務
・夫婦間の相互協力扶助義務に基づく生活費
・子に対する監護義務に基づく養育費
・従業員に対する給料
などが挙げられます。
4.自己破産するメリット 3つのメリットとは?
4−1 自己破産するメリット1:借金の返済義務を免除(免責)される可能性がある
自己破産する最大のメリットは、裁判所の免責許可決定を得ることができれば、借金の返済義務が免除されることです。
このことは、手続後も借金を返済し続けなければならない他の債務整理手段(個人再生、任意整理)との大きな違いでもあります。
また、自己破産すると、確かに一定の財産を処分しなければなりません。
しかし、自己破産の目的は破産者の生活再建への道筋をつけることですから、破産手続後も一定の財産を手元に残しておくことができます(破産手続によって処分しなくてもよい財産を破産者が自由に使えるという意味で「自由財産」といいます)。
つまり、自己破産すると、一定の財産を手元に残しつつも借金返済義務を免除して生活再建を図ることができるというメリットがあるわけです。
4−2 自己破産するメリット2:債権者からの督促・取立(督促等)がなくなる
自己破産手続は複雑で難しいですから、弁護士、司法書士(弁護士等)の専門家に依頼することが通常かと思います。
仮に、自己破産をはじめとする債務整理手続を弁護士等に依頼した場合、弁護士等は速やかに債権者に対して受任通知を送ります。
受任通知とは、弁護士等が債権者に対して「債務者●●から自己破産手続の依頼があり受任しました。」「債務者●●への督促、取立は一切中止願います。」「以後の連絡は弁護士●●へご連絡願います。」などという内容を書面で通知することをいいます。
この受任通知を受けた債権者(あるいは債権の回収業者)は債務者に対して督促・取立を行うことが禁止されます。
このことは法律にも明記されており、違反した債権者に対しては罰則を科す(回収業者に対しては行政処分を科す)こともできるとされています。
4−3 自己破産するメリット3:給与などの差押えが停止・取消しになる
自己破産する方の中には、強制執行により給与等を差押えられている、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、自己破産し破産手続の開始決定があった場合には、債権者が破産者(債務者)の有している財産に対して強制執行することができないのはもちろん、すでに行っている強制執行は停止または取り消されます。
強制執行により給与を差押えられているという場合は、自己破産するこことにより再び受け取ることが可能となり、生活再建に活かすことができます。
5.自己破産をするとどうなる?自己破産後の生活は?
自己破産をすると色々な不便があると思っている方も多いと思います。自己破産をするとどうなるのか?その後の生活についての疑問を北村弁護士が解説している動画がわかりやすいです。
5−1 旅行に行けないか?
お金がないから旅行には行けないことはあっても、旅行に行っては行けないということはありません。
5−2 パスポートは没収されるのか?
こちらもパスポートを没収されるということはありません。
5−3 海外旅行には行けないのか?
破産手続き中は、海外に行くには裁判所の許可が必要です。しかし、手続きが終われば、お金が貯まれば海外旅行にも行けます。
6.自己破産ができない人はいる?
ギャンブルや浪費など免責不許可事由と呼ばれるケースに該当する原因で借金をした場合は、免責を受けられません。
しかし、それでは、路頭に迷う方、精神が侵されてしまう方が増えてしまうため、裁判所は、多くの場合、「裁量免責」で免責されます。つまり、自己破産ができます。
詳しい元弁護士の方の解説ページがありますので、ぜひご覧になってください。